他人に自分名義で借金されていた時の対処法
他人の名義でお金を借りる方法を実行するなんてありえないと思えますが、実例はいくらでもあります。
他人に身に覚えのない自分名義の借金を作らされてしまった場合の予防法と対応をご紹介します。
他人に自分名義で借金されることなんてあるの?
そもそも知らないところで自分名義の借金なんてどうやってやるの?と思うかもしれませんが、個人情報の不正利用による借金トラブルは実際にあります。
なぜ自分名義の借金を作らされる可能性があるのか、主なケースを確認していきましょう。
ネットの普及による「なりすまし」
以前のカードローン契約は自動契約機(無人契約機)に行って手続きをすることが多かったのですが、近年はネットだけでお金を借りることができてしまいます。
運転免許証などの顔写真付きの本人証明書の写しは提出することになりますが、逆に言うと免許証さえ手に入れば他人名義でお金を借りることができてしまいます。
所謂「なりすまし」ですね。
しかし、なりすましによるカードローンの申込は、そう簡単にできるわけではなく、少なくとも職場(または学校)を知っておく必要があります。
そのため、なりすましによるカードローンの申し込みは、全く知らない人ではなく身近な人に行われてしまう場合もあります。
保険証を貸すことによる「なりすまし」
保険証は顔写真が載っていないため、比較的貸し借りがしやすい身分証明書となります。
もちろんダメなことですが、若気の至りで健康保険料の未払いがあり保険証を持っていない友達から「歯医者に行きたいから保険証を貸して欲しい」などと言われたことがある人もいるのではないでしょうか。
大手消費者金融や銀行カードローンは、保険証だけで融資を行うことはしませんが、逆に審査がずさんな街金や闇金などは借り入れできる場合もあるので恐ろしいです。
まさか!家族に身分証明書を不正利用される
悲しいことですが、家族に勝手にお金を借りられてしまうこともあります。持ち歩かない身分証明書をいつも同じ引き出しに入れっぱなしにしていませんか?
運転をしない人なら、運転免許証は自宅に置きっぱなしという人もいることでしょう。
家族なら勤め先も知ってますし、身分証明書を使えば家族が本人に内緒でお金を借りるのは比較的簡単なのです。
身分証明書さえあればネット銀行の口座が作れてしまいます。
口座も消費者金融の借り入れも、全てなりすましを行うことも不可能ではありませんし、口座が犯罪に使われてしまうこともあります。
本当は知られてはいけないことですが、クレジットカードのお互いのパスワードを知っているというご夫婦もいるかと思います。
この場合は、クレジットカードによるキャッシングができてしまいます。
クレジットカードの作成そのものも、家族によるなりすましなら簡単にできるでしょう。
筆者もつい先日クレジットカードを作ったのですが、身分証明書は免許証番号の入力だけでしたし、手続きは全てネットで完結しました。
自分あての電話もなければ勤務先への在籍確認もありませんでした。
クレジットカードは自宅に簡易書留で届くのですが、同居している人ならサインで受け取ることができます。
これなら何らかの方法で免許書番号がわかってしまったら誰でも簡単にクレジットカードの発行ができるのではないか?と感じています。
知らない間に連帯保証人になっていた
連帯保証人は債務者と同じ重さの返済責任があるのが怖いところ。
借り入れの規模の大きさにもよりますが、連帯保証人になるには身分証明書の写し、署名、押印が必要になることが一般的です。
身分証明書は免許証のコピーがあれば十分ですし、印鑑も実印が不要な場合もありますので、簡単に連帯保証人にされてしまう可能性もあります。
勝手に自分名義で借金されたことがわかったら?
勝手に自分名義で借金されたことがわかったら、絶対にやってはいけないのが「返済」です。
家族であろうと知らない人であろうと、誰かが勝手に作った借金を返す必要はないですし、1円でも返してしまうと逆に困ったことになります。
知らない借金が発覚した場合にやること・やってはいけないことをご紹介します。
知らない借金に返済義務はないが放置もダメ
自分あてに知らない請求がきた場合、あなたにはその借金の返済義務はありません。
ただし、返済はしなくても良いのですが請求書を放っておくのもダメです。
あなたからすると悪質ななりすましであっても、債権者は実際の債務者や連帯保証人をあなたとしています。
ここが架空請求と違うところですね。
架空請求詐欺なら関わらないのがいちばん良いのですが、なりすましを放っておくと、あなたに実際の被害が生じてしまうのです。
自分の意志で借金をしたわけではないことを証明しないと、催促が続いてしまいますし信用情報に傷がつくことになります。
人の借金のせいでブラックリスト入りして、今後5年から10年もどこからも借り入れができなくなるのは困りますよね。
債権者は借金の名義人に請求するしか方法がないので、悪事をはたらいた人ではなくあなたに連絡をしてきます。
ここで催促をしてきた貸金業者に連絡をして、勝手に名義を使われたこと、借金の返済義務が自分にないことを証明する必要があります。
債権者への連絡は電話でも良いのですが、電話1本で済む話ではありませんので、内容証明郵便で送ることをおすすめします。
内容証明郵便は、誰から誰にいつ送られた郵便なのかということと、その内容を郵便局が保証する郵便制度です。
内容証明郵便でなりすましであることを連絡することで、本気であることの意志表示にもなりますし、話し合いがこじれて裁判に進んでしまうような場合に有利に働く材料にもなります。
返済は絶対にしないこと
債権者は名義人が借りたお金と思っているので、催促は何度もあなたにくることになります。なんだか怖いし腹も立ちますが、立て替えのつもりでも絶対に払ってはいけません。
返済をしてしまうとあなたが返済をすることを認めてしまう「追認」となってしまい、返済義務が生じてしまうのです。
本来なら、なりすましによる借金は名義人に返済義務はないのですが、追認となってしまうと債務を引き受けることになってしまいます。
返済額に関係なく少額でも追認となるので、身に覚えのない借金は1円も払ってはいけません。
債務不存在確認訴訟の検討
内容証明郵便でもなりすましであることを債権者に認めてもらえない場合は、債務不存在確認訴訟を起こすことになります。
債務不存在確認訴訟は債務者が債権者を相手に起こす民事訴訟です。
勝訴すれば法律的に返済の義務がなくなるので、その後請求されることがなくなります。
債務不存在確認訴訟は専門家に依頼をしないと難しいケースがほとんどなので、弁護士に依頼して行うことになり、契約の際に本人確認があったか、筆跡が異なるか、連帯保証人の場合は印鑑は実印か等の確認がとても重要になってきます。
債権者も債務者も弁護士を立てて、あとは法定で戦いましょうということですね。
敗訴した場合は3年以内であれば損害賠償請求を行うこともできます。
ちなみに債務不存在確認訴訟は、自動車事故の裁判でも行われる場合があります。訴えるのは交通事故の被害者ではなく加害者です。
たとえば被害者が請求している賠償金が30万円だとします。
加害者(損保会社)はこれ以上請求されないように、「30万円以上の支払い義務がないことの確認」のために債務不存在確認訴訟を起こすのです。
裁判所に認められたら被害者はこれ以上に請求ができなくなるので、故意に賠償金を多く請求することができなくなります。
悪質な賠償金請求を未然に防ぐための措置ではありますが、善良な被害者が裁判を起こされないとも限らないので難しいところです。
勝手に自分名義で借金された場合の対応法
ここからは、身に覚えのない借金のケース別に対応策を確認していきましょう。
友達から自分名義で消費者金融から借金されていた場合
友達から自分名義で消費者金融から借金されていたケースの場合、他人があなたの身分証明書を不正利用したことが考えられます。
身分証明書を盗まれていないかを確認して、見つからないものがあったら迷わず盗難届を出しましょう。
請求書は放っておかないで、消費者金融に内容証明郵便で連絡をすることから始めましょう。
身分証明書の不正利用は当然犯罪なので、不正利用を証明すれば友達に返済義務が移ることになります。
親に勝手に消費者金融からお金を借りられていた場合
この場合も友達が身分証明書を不正利用した場合と同じで、不正利用を証明できればあなたが支払う必要はありません。
しかし・・・、家計が苦しいのが子供ながらにわかっていて、借金するしかない状況だとしたら、なかなか強くは言えないですよね。
親は借金を返さなければいけませんが、ない袖は振れないでしょう。
複雑な気持ちになりますが、だからといって子供名義で勝手に借金をするのは方法として間違っています。
親子関係であったり同居していても不正利用分は返済する必要はないのですが、印鑑や身分証明書の管理が雑で、家族ならいつでも誰でも持ち出せるような状態である場合は、不正利用の証明が難しくなってしまいます。
家族だからこそお互いにトラブルにならないように大事なものの管理はしっかり行いましょう。
クレジットカードのキャッシング枠を勝手に使われた
クレジットカードは本人以外の人が使うことはできませんが、ATMでお金を引き出せば、誰からも確認されることなく簡単にキャッシングできてしまいます。
キャッシング枠の不正利用がわかったら、まずはカード会社に連絡をします。
調査の上、名義人が故意にキャッシング枠を利用させたわけではないことと、過失があったわけではないことが確認できたら利用金額の補償を受けることができます。
気を付けたいのがクレカの管理不行き届きによる「過失」です。
あなたからすると本当に不正利用だったとしても暗証番号を利用してキャッシングされてしまうと補償されないことがあるので、生年月日などのわかりやすい数字を暗証暗号にするのはやめましょう。
なお、クレカのキャッシング枠の不正利用は犯罪ですので、警察に被害届を出すことも検討しなければいけません。
悲しいことにクレカ不正利用は、配偶者などのとても身近な人の方が簡単にできてしまいます。
他人にカードを使われるケースは滅多にないとは思いますが、クレジットカード等の暗証番号の管理はしっかり行っておきましょう。
クレジットカードのショッピング枠を勝手に使われた場合
これは筆者の実体験をお話します。
本当にある日突然という感じで、登録しているApple IDで、紐づいているクレカで決済をしましたというメールが届いたんです。
利用した覚えが全くなかったので確認したら、Apple IDとクレジットカードが不正利用されていることがひと目でわかりました。
他人に購入されたいたのはアプリと有料の動画サービスか何かでしたが、全て中国語だったので、お察しという感じです。
その後すぐにAppleに連絡して事情を話しました。不正利用の内容が普段の私のApple IDの使い方と全くかけ離れていたことから、比較的短時間で不正利用であることを認めてもらえました。
まだクレジットカード会社への引き落としがかかる前だったので、すぐに決済の取り消しを行ってもらえました。
今後の対策として、Apple IDに登録しているメールアドレスとパスワードを変更することなどを教えてもらったので、すぐに変更しました。
自分だけは大丈夫と思っていたわけではなかったのですが、自己防衛が甘かったことは事実として反省すべきところです。
不正利用を発見したタイミングが早かったこととAppleの対応が迅速だったことからこれだけで済みましたが、もっと手続きが煩雑になったり不正利用の証明が難しいこともあると思います。
Appleのように不正利用が疑われるときの対応が明確になっている場合は、その指示に従うことをおすすめします。
利用明細を見て何の請求かわからない場合は、クレジットカード会社に連絡すると調査してもらうことができます。
妻(夫)に勝手に連帯保証人にさせられていた場合
まっとうな金融機関なら、本人確認なしに連帯保証人にすることはありませんが、ありえないケースではありません。
たとえ妻(夫)であっても、勝手に連帯保証人にさせられていた場合は、支払い義務はありません。
しかし、実印などの管理を妻(夫)に任せていた場合は、話がやっかいになってきます。
本人は連帯保証人になることの「代理」を妻(夫)に委任したつもりはなくても、民法109条の表見代理が認められてしまうことがあるんです。
しかし、連帯保証人にされた配偶者に返済義務がないとしても、主債務者である妻(夫)の支払い義務は残ることになります。
もちろん勝手に連帯保証人にする方が悪いのですが、後味が悪いなりすましです。
家計を預かる方が貴重品を管理するのは仕方がないことかもしれませんが、定期的に利用状況を確認するようにしましょう。
連帯保証人になったが約束を守ってもらえない場合
「絶対に滞納しないから!」などと言われて連帯保証人になったのに、返済が遅れて自分に催促が来た場合はどうなるのでしょうか。
残念ながら滞納しないなどという口約束は、債権者には関係がありません。連帯保証人となった以上、債権者から催促されたら返済する義務があります。
連帯保証人と保証人は、責任の重さ・範囲が全く異なります。
連帯保証人ではなく保証人であれば
・債権者に「まずは債務者の財産差し押さえをして欲しい」と言える
・返済責任は、。借り入れ残高を保証人の頭数で割った金額だけで良い
という権利を持っています。
連帯保証人にはこの権利が一切ないので、請求されたら文句を言わず全額を返済する義務があります。
連帯保証人は、金銭契約だけではなく賃貸契約でも求められます。
本当に大事な友達・彼氏彼女だからこそ、安易に連帯保証人になるのは考えものですね。
友達の代わりに消費者金融からお金を借りた場合
ブラックリスト入りしていてどこからもお金を借りることができなくなった友達に「絶対毎月返済するから」と言われて、あくまでも代理で消費者金融からお金を借りた場合はどうなるのでしょうか。
この場合は、名義人に返済義務があります。
第三者である友達がなんと言おうと、消費者金融と契約としているのは名義人本人になります。債権者(消費者金融)と債務者(あなた)の契約に、友達は関与していないのです。
また、名義貸しは犯罪行為です。
お金が返ってこないどころか詐欺罪に問われてしまうこともあるので、安易に名前を使わせてはいけません。
まとめ:身に覚えのない返済請求は証明が必要
勝手に自分名義で借金されていたとしても、債権者は名義人であるあなたに請求をかけてきます。
これは仕方がないことなので、自分が借りたわけではないことを速やかに証明して支払い義務がないことを認めてもらう必要があります。
きちんと返済をしている人に対して債権者が返済請求をすることはありません。
返済の請求があってはじめて身に覚えのない借金に気が付いたという時点で、既に滞納があるということになりますし、このまま放っておくとわりと早いタイミングでブラックリスト入りしてしまうかもしれません。
身に覚えのない借金の返済義務はないとはいえ、巻き込まれると行きつくところは弁護士をたてた裁判沙汰なので、心身ともに疲れ果ててしまいます。
身に覚えのない借金トラブルを発生させないためにも、
・身分証明書、クレジットカード、貯金通帳、印鑑は身内にもわからないところに管理する
・暗証番号、パスワードは誰にも明かさない
・暗証番号、パスワードは定期的に変更する
・暗証番号(特に4桁の簡単な番号)は推測されにくいものにする
・使っていない消費者金融は契約解除してローンカードを破棄する
などの対策をとっておきましょう。